日米豪印外相会合とポンペオ国務長官
まずはこちらから。
菅首相と米豪印の外相の会談について
菅首相とポンペオ米国国務長官の会談は以下となります。
菅首相が海外の閣僚級と対面で会うのは初めてで、首相としての本格的な外交活動が始まりました。最初はポンペオ米国国務長官というのも案外興味深いですね。
昨年の5月の会談となります。
全てにおいて「自由で開かれたインド太平洋」というキーワードが出てきており、昨年も同じですが、拉致問題の早期解決というのも重要になります。ひとまずは顔合わせといったところとなります。
あとは日米豪印外相会合に出席するために、米豪印の外相も菅首相と会談をしてました。
ここでは、「ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を強化していく」といったキーワードが出てます。ここらへんは経済安全保障にも関係してくる話となりますので、この辺も抑えておく必要があります。
日米豪印外相会合について
今回は日米豪印外相会合がメインとなります。まずは日米外相会談となります。
10月6日午前11時頃から約70分間、茂木敏充外務大臣は、訪日中のマイク・ポンペオ米国国務長官(The Honorable Mike Pompeo,Secretary of State of the United States)と昼食を交えて外相会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。1 冒頭、茂木外務大臣は、ポンペオ国務長官の3年連続の訪日を心から歓迎すると述べた上で、新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領夫妻に対するお見舞いとともに、早期の回復を祈っている旨述べました。これに対し、ポンペオ長官から、お見舞いの言葉に対する感謝とともに、トランプ大統領夫妻にお伝えする旨述べた上で、インド太平洋の平和と安定のため、日米同盟が果たす役割は大きく、強固な日米同盟を一層強化したい旨述べました。その上で、両外相は、菅新政権の下でも、地域や国際社会の平和と安定の礎である日米同盟を一層強化していくことで一致しました。2 両外相は、同日開催される日米豪印外相会合での議論も踏まえつつ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、引き続き日米を始めとする有志国で連携していくことが重要である旨確認しました。3 両外相は、東シナ海、南シナ海及び北朝鮮情勢について意見交換をしました。北朝鮮情勢に関し、茂木大臣から、拉致問題は政権の最重要課題であるとした上で、北朝鮮の拉致、核、ミサイルの諸懸案の解決に向けて、今後も日米間で一層緊密に連携していくことで一致しました。4 サイバー・セキュリティに関して、ポンペオ長官から米国の取組について説明があり、茂木大臣から、日本はこの分野での米国との協力を深めていきたいと考えており、外交施設間の通信の安全に関する5Gクリーンパスの趣旨にも賛同していると述べました。5 両外相は、新型コロナのワクチン開発と公平なアクセスに関し、同志国と連携しながら、協力を強化していくことで一致しました。
今回は70分の会談となるので、それなりに突っ込んだ話になってるとは思います。どちらかといえば記事になっていない部分が気になりますが、自由で開かれたインド太平洋の実現、北朝鮮の拉致、核、ミサイルの諸懸案の解決というのは原則となります。
ここで興味深いのはサイバー・セキュリティに関する内容となりますが、米国の取組の内容、そして日米との協力の内容も重要ですね。5Gクリーンパスについては以下の記事を紹介します。
クリーン・パス構想は、次世代通信規格5Gによる通信が米国の外交関連施設を通過する際に、華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)など信頼できないベンダーからの機器・サービスを一切介さないことを求めるもの。今回発表された5つの新たな指針はこの構想を拡大するもので、同盟・友好国、世界各国の産業界にも懸念のある外国ベンダーを同様に排除することを求めている。それぞれの指針は次のとおり。1.クリーン・キャリア:信頼できない中国の通信キャリアが米国の通信網に接続されていないことを確実にする。2.クリーン・ストア:信頼できないアプリを米国のモバイルアプリストアから排除する。3.クリーン・アプリ:信頼できない中国のスマートフォン製造者(ファーウェイを例示)が、製造した端末に米国のアプリを事前インストールしている、もしくは独自のアプリストアからダウンロードできる状況を阻止する。4.クリーン・クラウド:アリババ、バイドゥ、テンセントなどの企業のクラウドシステムを通じて、米国市民の機微な情報や米企業の重要な知的財産が外国の敵対勢力に渡ることを阻止する。5.クリーン・ケーブル:米国と国際インターネット通信をつなぐ海底ケーブルが中国政府による諜報に侵されないよう確実にする。
以下の記事も参考になると思います。
次世代通信規格5Gによる通信が米国の外交関連施設を通過する際に、信頼できないネットワークを利用させないといった狙いで、同盟・友好国、世界各国の産業界にも、クリーン・パス構想を求めており、5Gにおいては、中国政府とつながりがあるとされる中国の通信企業を念頭に通信インフラ保護を推進する枠組みとなります。日本も5Gクリーンパスの趣旨にも賛同といった形となりますので、日本政府としても、実質的に中国系のキャリア、ストア、アプリ、クラウド、ケーブルに関しては採用しないといった方針になると思われます。
新型コロナのワクチン開発と公平なアクセスについては、安倍首相の提唱する特許権プールで進めていくものと思われます。記事を紹介します。
日米豪印外相会合について
10月6日、午後5時15分から約3時間、茂木敏充外務大臣は、訪日中のマリズ・ペイン・オーストラリア連邦外務大臣(Senator the Hon Marise Payne, Minister for Foreign Affairs of the Commonwealth of Australia)、スブラマニヤム・ジャイシャンカル・インド外務大臣(H.E. Dr. Subrahmanyam Jaishankar, External Affairs Minister of India)、マイク・ポンペオ米国国務長官(The Honorable Mike Pompeo, Secretary of State of the United States)と第2回日米豪印外相会合及び夕食会を行ったところ、概要は以下のとおりです。1 四大臣は、新型コロナウイルス感染症の発生・拡大後、初めて日本で行われる閣僚レベルの国際会議となった第2回日米豪印外相会合の開催を歓迎しました。2 四大臣は、新型コロナウイルス感染症の発生・拡大に伴って顕在化した諸課題への対応について意見交換を行い、保健・衛生分野やデジタル経済など新たな国際ルール作り等の課題について引き続き連携していくことを確認しました。3 四大臣は、「自由で開かれたインド太平洋」は地域の平和と繁栄に向けたビジョンであり、ポスト・コロナの世界において益々その重要性を増しているとして、その実現に向け、より多くの国々へ連携を広げていくことの重要性を確認しました。この関連で、四大臣は、ASEANの一体性及び中心性とASEAN主導の地域枠組みに対する強固な支持を再確認するとともに、「インド太平洋に関するASEANアウトルック」に対する全面的な支持を再確認しました。また、「自由で開かれたインド太平洋」に対する欧州を始めとする各国の前向きな取組を歓迎しました。4 四大臣は、「自由で開かれたインド太平洋」を具体的に推進していくため、質の高いインフラ、海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティ、人道支援・災害救援、教育・人材育成を始め様々な分野で実践的な協力を更に進めていくことで一致しました。5 四大臣は、北朝鮮、東シナ海・南シナ海を始めとする地域情勢についても意見交換を行いました。6 四大臣は、今後、この外相会合を定例化するとともに、来年の適切なタイミングで次回の会合を開催することで一致しました。
茂木外相のツイートです。明日が誕生日なのですね。65歳のお誕生日おめでとうございます。
まずは日本の外交を考える上で重要な資料として、概算要求は参考になると思います。約3時間にわたり日米豪印外相会合を行いました。「自由で開かれたインド太平洋」の具体的な推進、北朝鮮や東シナ海・南シナ海を含む地域情勢等について議論を行い、この会合を定例化することで一致しました。夕食会では明日の私の誕生日をケーキでお祝いしてもらいました。https://t.co/XoWYyEjs6T pic.twitter.com/WCx0pUQ0zx
— 茂木敏充 (@moteging) October 6, 2020
○令和3年度概算要求の概要
保健・衛生分野やデジタル経済など新たな国際ルール作り等については、上記の資料が一つの方向性となります。
ここでも「自由で開かれたインド太平洋」というのが出てきますが、「インド太平洋に関するASEANアウトルック」という用語もありますので、こちらも併せて紹介します。
ASEAN版インド太平洋構想を採択した理由は、日本、米国、豪州、インドという域外大国主導でインド太平洋協力が進められており、地理的には中心に位置するASEANの存在が低下する恐れもあり、ASEANとしての立ち位置として必要であったといった理由もあります。
あとは、質の高いインフラ、海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティ、人道支援・災害救援、教育・人材育成を始め様々な分野で実践的な協力も重要となります。
茂木外相が記者団に語った内容ですが、「4か国の外交の責任者が顔を合わせて議論できたのは、非常に意義深かった。自由で開かれたインド太平洋という、日本が提唱した外交コンセプトがこれほどまでに国際社会に浸透したことは今までなかったことであり、協力のさらなる具体化を進めていきたい」のが本音だと思います。この道筋を描いた安倍元首相の成果であり、このレールがあるので、安心して菅首相に託せたとは思います。
ポンペオ長官へのインタビューについて
NHKの記事の抜粋です。
ポンペイオ長官は新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領について「きのう、彼がまだ入院中に90分間にわたって話したが元気そうだった。すべてうまくいっている」と述べました。そして、大統領が新型ウイルスに感染し、政権の運営に影響が出ているさなかでも来日した理由について「インド太平洋が自由で開かれ、法により支配されていること、そして中国共産党による脅威にわれわれは反対しているということを確認するためだ」と説明しました。そして、ポンペイオ長官は、中国が南シナ海や東シナ海などで軍事力を誇示し、威圧的な行動をとり続けていると非難し「これは緊急の課題だ。世界はあまりにも長い期間、中国による脅威にさらされてきた。いまこそ、この問題に真剣に対応しなければならない」と訴えました。また、中国が海洋進出を加速させていることを念頭に「弱さを見せればつけこまれる。譲歩することは、威圧的で軍事的な手段を用いて問題を解決しようとする国を利することになる」と述べて、4か国だけではなく、ASEAN=東南アジア諸国連合など、価値観を共有する地域全体で中国に対抗していくべきだと呼びかけました。さらに香港や台湾をめぐり、米中の対立が深まっていることについて、ポンペイオ長官は「これはアメリカ対中国という問題ではない。これは自由と専制政治のどちらを選ぶかの問題だ。軍や威圧的な力を使って弱い者をいじめる国に世界を支配させてよいのか」と主張し、米中2か国の問題ではなく、国際社会の問題だと強調しました。また、新型ウイルスの感染拡大などの影響で延期された中国の習近平国家主席の日本訪問について、ポンペイオ長官は「日本が決めることだ」と述べる一方で「日米のあいだでは、とても多くの分野で連携しているし、中国共産党の行動が、さまざまな国どうしの協力関係をより強固なものにしている」として、中国に対抗していくうえで日米の足並みに乱れはないという認識を示しました。
あとは会員記事となりますが、こちらも紹介します。
トランプ大統領の状況はいろいろと錯綜させておりますが問題はなさそうですね。重要なのは、米中2か国の問題ではなく、国際社会の問題であって、法の支配や価値観を共有する地域全体で中国に対抗するなど、「中国共産党の挑戦に対抗する安全保障網」を構築していくというのは、ポンペオ国務長官の狙いでもあり、その構想にあるのが、「自由で開かれたインド太平洋」になるわけです。
そして、新たな安全保障枠組みの役割については、経済や法の秩序、知的財産権の保護など幅広い分野も協力の対象になるといった「経済安全保障」という概念が重要となるわけで、中国共産党を野放しにしてはいけないというのを、国際社会として足並みを揃える必要があります。中国共産党に対して融和策は通じないし、ポンペオ長官の言う通り、「弱さを見せればつけこまれる。譲歩することは、威圧的で軍事的な手段を用いて問題を解決しようとする国を利することになる」わけで、そうさせないためにも、同盟関係を強化することで対抗するのが理想ですし、日米豪印外相会合で来日した一番の理由は、日米豪印の結束といった部分が大きいと思います。
最後に中国の習近平国家主席の日本訪問については、「日米のあいだでは、とても多くの分野で連携しているし、中国共産党の行動が、さまざまな国どうしの協力関係をより強固なものにしている」として、「中国に対抗していくうえで日米の足並みに乱れはない」という言葉がすべてだと思います。決して中国に対して日本は甘い対応は取っていませんし、拉致問題の解決などは、習近平国家主席の協力は必要ですし、中国共産党の暴走を止めるためにも、習近平国家主席の力は必要となります。
そのための鍵となるのが、「日中新時代」という概念となります。
その点では、習近平国家主席と李首相との協力関係も重要ですし、中国共産党の悪しき伝統?を内部から壊していくための構図となるのが、「日中新時代」といった概念となるのと、日米の中国に対するアプローチは異なるが目的は同じであるということも重要なポイントになると思います。