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警視庁外事課の改編について


 警視庁公安部の管轄で、ロシアや中国、北朝鮮などによる工作活動やテロを取り締まる「外事課」について、現状の全3課体制から4課体制へ改編することが9日、同庁関係者への取材で分かった。北朝鮮関連事案の捜査に専従で当たる課を設ける。

 現在の外事課は、ロシアなどが捜査対象の「外事1課」、中国と北朝鮮を対象とした「外事2課」、海外での邦人被害テロ事案などを捜査する「外事3課」からなる。

 同庁関係者によると、組織改編では、外事2課が受け持っている中国と北朝鮮を分離。新外事2課が中国、新外事3課が北朝鮮を捜査対象とし、海外テロ事案は新設される「外事4課」が担う。中国と北朝鮮に対し、担当課がそれぞれ特化して対応できることとなり、情報収集の強化などが見込まれる。

 同庁関係者によると、来年4月をめどに新体制を発足させる。警視庁は外事課の人員拡大に伴う予算や配置などについて、東京都など関係機関と調整している。同庁関係者は、「中国と北朝鮮の脅威は増しており、組織改編で情勢に応じた体制を構築する」としている。
関連記事は以下となります。


警視庁公安部の管轄で、ロシアや中国、北朝鮮などによる工作活動やテロを取り締まる「外事課」について改編することが決まったようです。現在の警視庁公安部の外事課は以下となります。


外事第一課 主にロシア・東ヨーロッパの工作活動や戦略物資の不正輸出を捜査対象とする。また犯罪経歴証明書の発行も担当。

外事第二課 主に中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国の工作活動、戦略物資の不正輸出を捜査対象とする。

外事第三課 国際テロリストや、中東地域のスパイなどを捜査対象とする。アメリカ同時多発テロ事件を受け、2002年10月に発足した。

改編後はアジア全体を受け持っている外事2課から独立させる形で北朝鮮を専門に担当する課を新設しつつ、外事第二課も中国に対象を絞ることで外事第二課を強化するといったところになると思われます。

今までは北朝鮮と中国を1つの課で担当してきましたが、北朝鮮は工作員による日本国内での活動など、中国によるスパイ行為への取締りの強化、経済活動などを装って情報を入手しようとする動きなどの牽制などの強化といった形で、別の課に分けることで専門性を高め、各国との情報戦に対抗する狙いがあるようですね。

外国資本などの土地買収対策の件


 政府は8日、自衛隊基地など安全保障上重要な施設の周辺の土地を外国人らが取得することへの監視を強化するため、新法を制定する方針を固めた。来年の通常国会に法案を提出したい考えだ。周辺地の所有者の国籍などを調査したうえで安全対策につなげる仕組みを整備する方針だ。月内にも有識者会議を設置し、新法の具体的内容の議論を始める。

 菅首相が同日、領土問題を担当する小此木国家公安委員長と首相官邸で会談し、新法制定に向けた検討方針を了承した。

 外国資本の土地買収を巡っては、自民党内から「テロや犯罪の拠点に利用される可能性がある」として早期の対応を求める声が上がっていた。

 新法では、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)の基点となる国境離島や、自衛隊関連施設、原発などを「安保上の重要施設」に指定し、周辺の土地を調査対象とする方向だ。事前に土地買収計画の届け出を求めることも検討する。

 政府内には、周辺地の所有者の国籍や外国との関係、購入目的などを調査項目とする案がある。国勢調査などと同様、罰則つきの守秘義務が課された委託業者が調査を実施する見通しだ。
自衛隊基地など安全保障上重要な施設の周辺の土地を外国人が取得することへの監視強化のために新法を制定する方針を固めたようです。安倍元首相が「自由で開かれたインド太平洋」の戦略を多くの国と共有したことによって、日本が中心となった外交の路線が軌道に乗ったタイミングですし、国内の一連の課題については、菅首相の役割となっており、動きが早くなってきております。

最もこの件については昨年の段階から検討を重ねており、新法を制定する目処がついたと思われます。
これは今年1月の記事となります。
下記記事を紹介します。


日経新聞の記事の概要は以下となります。
  • 自衛隊施設や原発の周辺地域の外国人による土地取得の実態は、明確な資料や統計はなく、政府も全体像を把握できていない
  • 政府は20年6月をメドにまとめる骨太の方針で、外国人による土地取得の制限について方向性を示し、21年の通常国会までに新法の制定を軸に法整備
  • 米国は軍事施設や空港、港湾に近い不動産の取得も20年2月までに審査対象とし、制限をかける見込み
  • 中国では外国資本が土地を所有することはできない
  • 外国人の土地取得については、WTO規定があり、安全保障を理由にした取得制限は認められているが留保せず受け入れた
  • 見直しにはWTO加盟国との交渉が必要
  • 19年11月に原子力やIT(情報技術)など安保上、重要な日本企業への出資規制を強化する改正外為法が成立
  • 欧米諸国もここ数年に外資規制に踏み切っている
  • 外国人土地法に「国防上、必要な地区で政令により取得を禁止・制限できる」と明記されてるが、政令がないため機能せず、政府はこれを根拠とする規制は難しいとみている
関連の過去記事を紹介します。



WTOの方は時間がかかるし、現段階で加盟国と交渉してもあれですので、WTO改革などについては、恐らく経済安全保障といった新たな国際ルールに組み込むと思われるので、直近の対策として、安全保障を理由とした取得制限といった形で、規制をかけて抑制する狙いがあると思われます。

現段階の方向性としては、事前に土地買収計画の届け出を求める、周辺地の所有者の国籍や外国との関係、購入目的などを調査項目とする、罰則つきの守秘義務が課された委託業者が調査を実施するといった形で、昨年の改正外為法と同じスキームと思われます。


○外為法改正について

「国の安全等を損なうおそれがある投資に適切に対応」といった意味では、外為法は株式でしたが、今回の場合は土地に組み込むイメージとなります。恐らく指定してしまえば、指定の場所については、既に保持していても所有者の国籍や外国との関係などは調査対象とすることは可能ですし、そういった意味でも対策が必要となります。

日銀のデジタル通貨実験について


世界で中央銀行が自らデジタル通貨を発行する機運が高まってきた。日銀は9日、実証実験を2021年度に実施すると発表した。日米欧の中銀グループが同日に公表した実際に発行する際の基本原則に沿ったもので、デジタル通貨の準備で先行する中国への警戒感がにじむ。日米欧と中国でデジタル通貨の主導権を巡る争いに発展しつつある。

中銀の発行するデジタル通貨はCBDC(Central Bank Digital Currency)と呼ばれる。日銀だけでなく欧州中央銀行(ECB)も21年に実証実験を検討し、米国も研究を進めている。

先進国では決済のデジタル化が進み暗号資産(仮想通貨)の利用も増え始めた。米フェイスブックはデジタル通貨「リブラ」の発行を計画し中国はデジタル人民元の発行へ実証実験を進める。

こうした通貨の流通が増えて決済データが他国に流出したり、テロ支援に使われたりすると経済安全保障の問題になるため、各国が自らデジタル通貨を発行する検討を進めている。理論上、自国以外の通貨の流通が増えれば、金利の調節など金融政策の効果が及ばなくなる恐れもある。中銀が物価のコントロールをできなくなり経済に打撃を与えかねない。

日銀は実証実験の時期を「21年度の早い時期の開始を目指す」とした。現時点で「CBDCの発行計画はない」という従来姿勢は変えないがデジタル化の進展に対応できるよう体制を整備する。

実験は3段階で想定する。まず発行や流通など通貨に必要な基本機能を検証する。システム上で実験環境をつくり電子上でのお金のやり取りで不具合が起きないかを調べる。発行残高や取引の履歴を記録する方法なども検討する。2段階目では金利を付けたり、保有できる金額に上限を設けたりするなど通貨に求められる機能を試す。

3段階目の「パイロット実験」は必要に応じて実施し、ここで初めて民間の事業者や消費者が参加する形を検討する。

日銀が将来、CBDCを発行する場合、現在の現金と同様に金融機関を介した形式になるとみられる。個人が日銀に口座を持つと民間金融機関から預金が流出し、金融システム不安を招きかねないためだ。

現金がデジタル通貨に置き換わると、保管や輸送にかかるコストが下がるのが利点だ。透明性も高まり脱税の防止などにもつながる。一方で利用者情報の保護など課題も多い。実際の流通には日銀法などの改正が必要になる見通しだ。日銀は実証実験と並行して、制度設計の検討を進める。

中国は日米欧に先んじてデジタル人民元の発行準備を急ぐ。広東省深圳市は12日午後6時から、市内在住の中国人5万人が約3400店での買い物にデジタル人民元を使える実証実験を始める。中国は22年開催の北京冬季五輪までに発行する方針を打ち出している。

使い勝手の良いデジタル人民元が普及していけば中国との貿易決済などでドルの比率が低下し、新興国を中心に人民元を基軸にした新たな経済圏ができるとの見方がある。ハーバード大学のアディティ・クマール氏は「競争力あるデジタル通貨を開発できなければ米国の世界での影響力は損なわれる」と指摘する。

日銀やECB、英イングランド銀行など6中銀と国際決済銀行(BIS)は1月に共同研究グループを創設し、CBDCの利点や課題を検討してきた。9日に公表した共同研究報告書では(1)現金や民間のデジタル通貨などと共存(2)中銀の政策目的の達成を支援し金融の安定を害さない(3)技術革新や効率性を高める――を基本原則に掲げた。

過去記事を紹介します。「デジタル通貨について」は基本中の基本です。



あとは日銀のレポートも参考になると思います。


背景としては、デジタル通貨の流通が増えて決済データが他国に流出したり、テロ支援に使われたりすると経済安全保障の問題になるため、各国が自らデジタル通貨を発行する検討を進めております。

日銀のレポートの通りですが、「CBDCが「ユニバーサル・アクセス(Universal access)」と「強靭性(Resilience)」という2つの特性を備えることが技術的に可能かどうか検討」というのが課題となっており、オンライン決済については問題はないのですが、オフライン環境時のセキュリティや信頼性をどのようにして技術的担保をもたせることが出来るかが重要なポイントとなります。

また、中国でデジタル人民元を進めてるのは、「技術面での優位性を世界にアピールしつつ、国内の課題である不正のあぶり出しや汚職対策を強化する狙いがある」といった狙いがあります。新興国を中心に人民元を基軸にした新たな経済圏とありますが、通貨の信用がどこにあるかといえば、基軸通貨となる要素をある程度担保する必要があります。決済ができれば、ドルの比率がそのまま低下するわけではなく、ドルを担保としたデジタル通貨で決済されるといったイメージになる可能性が高いです。

以下の記事を紹介します。
金融市場を開放しても大きく変わるわけではないのは言うまでもありませんし、デジタル人民元がドルに変わるものではなく、中国国内向けの腐敗対策といった意味が強く、国内向け対策プラスアルファといった形ですので、その点の心配は恐らくないと思われます。