今日は経済安全保障についてです。

経済安全保障に関する国家戦略について


 自民党の新国際秩序創造戦略本部は、経済安全保障に関する国家戦略の確立に向け、議論の「中間取りまとめ」を策定した。民間を含めた社会全体で取り組みを進めるため、「経済安全保障一括推進法(仮称)」の制定を求めた。年内にも提言をまとめ、政府に提出する方針だ。
 中間取りまとめは、新型コロナウイルスの終息後をにらんだ国際社会の動きについて「米中対立の先鋭化をはじめ、各国が国際秩序の在り方を模索している」と指摘。中国を念頭に「デジタル監視型・国家資本主義型の新たな国際秩序が伸長しつつある」と懸念を示した上で、「わが国としての経済安保戦略の策定が必要だ」と強調した。
 具体策として、一括推進法制定に加え、地域別・分野別の戦略を立案すべきだと主張。情報収集能力を強化するため、英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」への参画を含め、国際連携を強化するよう提唱した。
 国際社会のルール形成に積極的に関与するため、国際機関の幹部ポストへの日本人や友好国の人材の就任を促進。欧米諸国と協力しながら、最先端の通信規格「5G」に続く「6G」の研究開発に集中投資し、世界初の製品化と国際標準の形成を目指すことも明記した。
 「産業データ利活用推進法(仮称)」を世界に先駆けて制定し、欧米と協調して中央銀行デジタル通貨(CBDC)の早期導入と流通を図ることも求めた。
 このほか、(1)選挙のかく乱などを狙ったフェイクニュースへの対処(2)排他的経済水域(EEZ)内での資源開発(3)新たな感染症流行に備えた新型インフルエンザ対策特別措置法の改正―なども盛り込んだ。
経済安全保障について、以下の記事を紹介します。

経済安全保障とは「経済ツールを活用して地政学的国益を追求する手段」のことです。具体的には「貿易政策」「投資政策」「経済制裁」「サイバー」「経済援助」「財政・金融政策」「エネルギー政策」などがあります。経済安全保障と聞くと経済制裁を思い浮かべる人も多いと思いますが、実際にはより広い概念を示しています。
実際には技術流出防止や輸出管理だけではなく、「経済ツールを活用して地政学的国益を追求する手段」そのもので、経済ツールに関するパッケージというのが実態に近いです。

以下の記事を紹介します。


ここで重要なのは、外資などの土地取引の制限も経済安全保障に含まれてるということになります。これはWTO改革の中に含まれてる内容となります。

経団連の経済安全保障に関する記事を紹介します。


ある程度見れば見えてくると思いますが、経済安全保障というのは、新しい時代の安全保障そのものであって、今後の国際ルールそのものに繋がるくらい重要な内容となります。ある意味、米中冷戦?を終わらせるというか、戦後レジームを終わらせる枠組みといった意味での位置付けとなります。なので、日本がルール作成に加わるためにも、積極的に動くというのが国策ともいえます。

話が脱線しましたが、元記事の中間とりまとめのポイントは以下となります。

・経済安全保障一括推進法を制定
・ファイブアイズ参画を
・国際機関幹部ポストへの就任促進
・6Gの世界初の製品化と国際標準形成
・産業データ利活用推進法を制定
・中央銀行デジタル通貨の導入・流通

以下の記事を紹介します。
これらの取り組みはどれも重要ですし、日本としてどれだけの役割を果たせるかに尽きますが、こういった議論を進めるのが重要ですし、その間に妨害などが入ると思いますので、そういった意味での対策も重要となります。

他の内容として以下のものがあります。

(1)選挙のかく乱などを狙ったフェイクニュースへの対処
(2)排他的経済水域(EEZ)内での資源開発
(3)新たな感染症流行に備えた新型インフルエンザ対策特別措置法の改正

興味深いのは、「(1)選挙のかく乱などを狙ったフェイクニュースへの対処」の部分ですね。ネットというよりは、新聞やテレビのメディアのフェイクニュースが深刻ですし、これについては是非とも対策を行ってほしいですね。

先端技術の輸出規制の枠組みの検討について


人工知能(AI)や量子コンピューターなどの先端技術が軍事転用される事態を防ぐため、日本政府が輸出規制の新たな枠組みを米国やドイツなどに提案する検討に入った。民間技術を活用して国防力を強める中国を念頭に、緊密に連携して素早く輸出を制限できるようにする。

輸出規制を巡っては米国が中国の華為技術(ファーウェイ)を対象に実施するなど独自に動いている。今後も先端技術などで規制を定める方針だ。ただ米国が単独で規制拡大を進めることで国際的に足並みがそろわない事態になっている。(略)
経済安全保障に関連した内容となりますが、先端技術の輸出規制の件です。先端技術が軍事転用される事態を防ぐ枠組みとして、日本政府が輸出規制の枠組みを米国やドイツ、英国、オランダなどへ連携を呼びかけ、2021年に実現を目指すそうです。

輸出規制の枠組みについては、国際輸出管理レジームがあります。こちらについては、Wikipediaと外務省のHPを紹介します。



輸出管理レジームの中には、以下の5項目があります。

・原子力供給国グループ(NSG)
・ザンガー委員会(ZC)
・オーストラリア・グループ(AG)
・ミサイル技術管理レジーム(MTCR)
・ワッセナー・アレンジメント(WA)

ワッセナー・アレンジメントは、以下のような内容において輸出管理が行われております。

1 目的
(1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大及びより責任ある管理を実現し,それらの過度の蓄積を防止することにより,地域及び国際社会の安全と安定に寄与する。
(2)グローバルなテロとの闘いの一環として,テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止する。

ワッセナー・アレンジメントは、42か国参加しており、意思決定に時間がかかることから、新たな先端技術を持ってる国に限って連携を行い、短期間に規制品目を決めるための枠組みとなります。

規制品目としては、以下の内容となります。


今は米国が単独で規制拡大を進めていることで、国際的に足並みがそろわない事態となっていることから、日本政府が仲介する形で、先端技術の輸出規制を呼びかけるといった動きのように見受けられます。

あとはファーウェイ関係で、中国最大の半導体企業SMICへの輸出に規制をかける動きとなっております。
現状においては、軍事転用される事態を避けるための輸出規制が強化がされる流れとなりますが、こういった電子部品というのが、死活問題となっているのも現状です。
ドローン兵器などローコストで効率よく打撃を与えることが出来るようになっているわけで、半導体製造装置や通信機器も含め、これらの先端技術が輸出制限を行わなければ、テロへの脅威と繋がりかねない事態ともいえます。これらの技術が大量殺戮兵器やテロに転用されないためにも、こういった取り組みは必要なものだと思います。