夏休み期間中なのでのんびりと更新します。次回は土曜日更新、月曜以降は通常更新となります。


今日は大阪堂島商品取引所の件となります。記事を紹介します。


コメ先物取引、廃止へ 農水省、本上場認めず | 共同通信


 大阪堂島商品取引所は6日、農林水産省に申請中だったコメ先物取引の本上場に関し、農水省から不認可の結果通知があったと発表した。取引に参加する生産者などの数が少なく認可基準に不適合な点があるとして5日に同取引所から意見を聴取したが、不十分と最終判断した。大阪堂島商取は試験上場を再延長しない方針を既に示しており、国内唯一のコメ先物は上場廃止となり、姿を消すことが決定的となった。


 コメ先物は江戸時代に大阪・堂島で世界に先駆けて誕生。試験上場は2011年の旧民主党政権下で始まったが、本上場による恒久化を果たさずに幕を閉じる。


関連記事は以下となります。

大阪堂島商品取引所ですが、コメ先物取引の本上場に関し、農水省から不認可の結果通知があったようです。コメ先物取引の試験上場は2011年の旧民主党政権下で始まったみたいですが、上場廃止となり廃止することが決まったようです。上場の経緯としては、米を統制していた食糧管理法が1995年廃止され、2005年商品取引所が米の先物市場を農水省に申請した。しかし、JA農協の意向を受けた自民党は認めず、民主党政権の2011年やっと試験上場が認可されたわけで、これについては民主党政権の取り組みといった一面もあります。


上場当時のニュースとなります。

今回許可されなかった理由としては、取り引きに参加する生産者や流通業者が増えていないというのと、売買が盛り上がったのは最初だけですし、日本のコメは少量多品種であり、新潟コシヒカリに取引が偏り扱いにくいこと、そして生産者団体である農業協同組合の理解を最後まで得られなかったといったところが原因だったようです。


ここで大阪堂島商品取引所のWikipediaの紹介。


大阪堂島商品取引所 - Wikipedia


公式ページは以下となります。


沿革は以下となります。


  本所の前身である大阪穀物取引所は、戦前の堂島米穀取引所の 再現を目指し、将来の米上場を視野に入れながら1952年に設立されました。 以来、雑穀類を上場商品として、関西圏における経済機能の一翼を担いつつ 1993年 大阪砂糖取引所及び神戸穀物商品取引所と合併(関西農産商品取引所に名称変更)、 1997年 神戸生絲取引所と合併(関西商品取引所に名称変更)、2013年に東京穀物商品取引所から一部商品の移管を行うとともに、大阪堂島商取引所に名称変更しました。 2018年10月には、取引システムを板寄せ方式からザラバ方式に移行しました。その後、2021年4月に組織変更を経て株式会社となりました。(「株式会社大阪堂島商品取引所」に名称変更)

  先物取引発祥の地である「堂島」の流れを汲む商品取引所として、また、世界に伍する総合取引所として、先物市場の発展と活性化に貢献していくことを目指しています。


堂島取引所は世界における先物取引所の先駆けとも言われる存在で、歴史としては江戸時代までさかのぼります。



元々の堂島米市場についても、明治維新などの政治的な動きなどの混乱によって、取引所の価格が高騰して、需給には問題はないが、価格調整の機能が崩壊したことで取り引きが禁止され、2年後に堂島米会所として再興することになります。堂島米市場世界における先物取引所の先駆けとも言われる存在ではありますが、何度か廃止して再生しながらも、別の姿に生まれ変わっており、堂島取引所はある意味テセウスの船みたいなものともいえますwww


今年の4月に大阪堂島商取引所は株式会社化したわけですが、IR情報などを見ても、株主の状況は開示されておりませんが、記事を見る限りでは、SBIホールディングス(HD)系が2社で議決権の33.9%を保有しているようです。

SBIホールディングスの株主状況。いつもの方々が見えております。


株式の状況 - 株主・投資家の皆様へ|SBIホールディングス



個人的には株主の開示されていないような取引所で、コメ先物取引を本格上場させるというのもどうかと思う部分があるのと、テセウスの船ともいえる実質的に外資系に近い堂島取引所といったところも、不信感がある部分は否定はできません。


その後は排出権の上場など、いろんな意味で心象が悪いのは自分だけではないでしょうw

ここで先物取引の基本について抑えておきましょう。


先物取引とは、ある商品(原資産)を、将来の決められた日(期日)に、取引の時点で決められた価格で売買することを約束する取引です。また、商品先物市場には生産者、需要家の参加が必要で、こうした参加者に価格変動リスクを軽減する手段を提供することが役割が主体となります。


先物取引の目的は以下となります。


先物取引 - Wikipedia


先物取引が行われる目的は複数ある。


・価格変動の影響を避けるリスクヘッジ

・適正価格を定めるための商品価格の調整機能

・価格変動を利用して利益を得るスペキュレーション

・(受渡が可能な先物取引の場合)商品の調達先や販路の確保


あとこちらのページも分かりやすいと思います。


2-1 先物取引とは? ─ 2 先物取引 ─ やさしいデリバティブ|知るぽると


先物取引は基本的には価格の変動があるものを一定の値段で売ったり買ったりすることができるので、市場が実需に伴った形で機能していればという条件がつきますが、価格変動の影響を避けるための手段(リスクヘッジ)だったり、商品価格の調整機能なども持っております。当然、市場というのは実需だけでは動かずに思惑のみで動く場合もありますので、リーマン・ショック時の原油先物市場みたいな事態を引き起こす場合があります。


第1節 足下の原油価格下落の要因分析と今後の展望 │ エネルギー白書2016 │ 資源エネルギー庁




2000年半ばから原油価格は上昇を続け、2008年7月には145ドルを突破しました。しかし、2008年後半には40ドルを割り込むまで急落し、翌年8月には70ドルを超える水準まで回復するという乱高下を記録しました。


原油価格高騰の要因としては、中国をはじめとする新興国の石油需要の急増に加え、中東地域の地政学リスクの増加、1990年代末の原油価格下落を背景としたメジャー各社の上流開発への投資停滞、OPEC加盟国の余剰生産能力の低下による将来的な供給不安などが挙げられますが、実際の需給バランス上は、大幅な供給不足が起こったわけではありませんでした。


この時期の特徴としては、原油先物市場への資金流入が挙げられます。サブプライムローン問題が顕在化した2007年以降、株式・債券市場での運用利益が低迷を続けた時期に、投資家がこれらの伝統資産における運用から商品、不動産を投資対象とする投資方法を拡大したことが背景にあります。こうした中、原油価格は、2007年以降、史上最高値を次々と更新し、サウジアラビアをはじめとする産油国側に警戒感が生まれるほどになりました。


先物市場というのは、需給バランスだけで動く性質があるわけではなく、原油などの生活必需品であれば、思惑などで実需とは関係ない価格となっており、市場価格というのは大層な響きですが、市場というのはプレイヤー外の資金が流入することで、実需による価格を歪めていくといった特性があります。価格は実際の需給ではなく、資金などの物量や思惑で動く場合が多いことから、消費者や製造者が存在しない場所での価格が作られ、市場というのが必ずしも機能するとは限らないともいえます。身近な例でいえば、PS5の転売などが分かりやすいですが、転売屋が買い占めることでメーカーの定めた価格が機能しなくなり、メーカーと消費者の両方に悪い影響を及ぼすことになります。


EUでも商品取引の投機規制といった規制案などを採択してることなどもあり、プレーヤー外の大量の投機マネーというのは弊害が大きく、規制が必要な一面があると思います。

最もこういった商品取引を投機に利用するのはそぐわないし、個人的にはこんなもん仮想通貨でやっとけと思うわけで、仮想通貨市場があることによって、商品先物市場の歪みが減っていったといった一面もあるのが興味深いところです。余談ですが、コロナ禍の状況で商品先物市場が暴騰しなかったのは、ある意味、仮想通貨市場のおかげでもあり、これがなかったら、恐らくリーマンショック前の原油市場の状況を招いてた可能性が高いです。


因みに民主党政権時にこういった答弁がされてました。


米先物取引の誘導に関する質問主意書


衆議院議員木村太郎君提出米先物取引の誘導に関する質問に対する答弁書


ちょっと脱線してしまいましたが、本題に戻ります。


JAの反対の理由は以下となっております。


コメ先物取引が低迷する背景 「マネーゲーム反対」JA主張に正当性はあるか (2/4ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)


コメ先物市場の試験上場2年延長を受け、JAグループの総合的な指導機関「全国農業協同組合中央会」(JA全中)は早速、万歳章会長名で上場廃止を求めるコメントを発表した。


 「われわれはコメ先物取引に反対であり、引き続き取引には参加せず、上場廃止に向けた運動を展開する」


 JAグループ幹部はコメ先物を「投機的なマネーゲーム」と指摘する。


 全国のコメ流通量の約半分のシェアを握るJAにとって、「先物市場が広がれば、JAの価格決定権が脅かされる」との“本音”も見え隠れする。


 株式と同様、コメ先物市場で付いた値は現物価格の指標にもなるため、JAは抵抗しているようだ。


 かつて、JAは政権与党である自民党の“大票田”といわれ、自民党も食料自給率を守る観点から、さまざまな農業保護策を取ってきた。


JAの主張は一理あるし、JAが農業のリスクヘッジとしての機能を持っている部分もあり、JAの価格決定権というのは死活問題でもあるともいえます。制度を変えるというのは、単純にそれだけを見るのでなく、農業はビジネスという一面もありますが、安全保障といった一面も持っており、単純に効率を求めるだけの世界ではないし、部分最適ではなく、全体最適といった一面が求められるわけで、ここらへんは政治家だったり、個々の政策を監督する省庁の役割とも言える部分があります。


ここで自民党の作業部会の話となりますが、農林水産省は生産調整への参加を要件とした米政策を基本としており、先物取引は政策と不整合といったスタンスのようですし、自民党にとってJAが最大の支持母体でもあるので、JAへの配慮は必要といった一面もあります。

あとはこの記事を見ればある程度のことが見えてくると思います。

あとこちらも参考になると思います。

JAの役割については、以下を紹介します。


農業協同組合 - Wikipedia


実際のところ、別にJAはどっかの日弁連と違って強制加入団体ではありませんし、日弁連に加盟していないと弁護士活動が出来ないといった性質があるわけではありませんので、農業をやる上でJAが足かせになるというのは、ちょっと違うような気がします。農業をビジネスとして特化したい場合は、JAには加盟せずに業務提携してやっていくという方法もありますし、JAの既得権益が問題で農業を潰しているというわけではないです。現にJAに加盟しない農家も増えてきており、そこらへんは棲み分けの問題で、基本的には共存する関係であるともいえます。


コメとJAは欠かせない関係にはありますが、日本にとってのコメは食糧というだけではなく、伝統といった一面、そして安全保障といった一面もあり、プレイヤー外の投機資金が流入するのを避けないといけないといった一面があります。


食料安全保障について:農林水産省


農林水産省としての意図としては、米の価格を市場では決めさせないという判断になるわけですが、ここらへんは安全保障の絡んだ話と、あとは中国のコメ先物市場の関係もあるかもしれません。単純にコメの輸出ビジネスに特化すれば、日本のコメ先物市場で、中国のコメ先物市場を牽制するというのは戦略としてありなのですが、日本のコメは少量多品種で普遍性がなく、世界全体のコメ市場は大きくないことなどを考えると、資源と同じような戦略物資でもないため、大豆やとうもろこしや小麦のような普遍性もないため、コメ先物市場自体に懐疑的な一面もあるように思います。コメ先物の上場というのは、日本の消費者に不利益のみを被るだけの可能性が高く、監督する農林水産省としても、コメ先物市場を認可するメリットは全くなくデメリットしかないことも不認可の理由にあったように思います。