給与デジタル払いの件
今日は給与デジタル払いの件です。
記事を紹介します。
給与デジタル払い、21年度制度化 具体案提示へ―厚労省方針:時事ドットコム
内閣府は5日、規制改革推進会議の作業部会を開き、給与をスマートフォンの決済アプリに直接入金する「デジタル払い」について議論した。厚生労働省は会合で、2021年度のできるだけ早期に制度化を目指すと表明。この問題を議論している労働政策審議会分科会の次回会合で具体的な制度案を示す方針を明らかにした。
銀行口座を介さない給与のデジタル払いは、政府の成長戦略で20年度中の実現を目指すとしていた。ただ連合など労働界は、スマホ決済の安全性に対する懸念から、解禁を急ぐ政府方針に反発。連合は決済事業者が経営破綻した場合の顧客保護なども問題視しており、議論が難航している。
給与デジタル払いの件です。いまいちまとまった資料もなく、問題点も多いというよりは、口座を作れない人用のものといったところになると思われます。一般の労働者にとってはほとんど関係ない話となります。
資料を紹介します。
○デジタルマネーによる賃金支払いの解禁
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/toushi/20200310/200310toushi04.pdf
これだと少し分かりにくいので以下の記事を紹介します。
日本では労働基準法第24条によって、賃金支払の五原則として以下のように定められております。
(1)通貨で
(2)直接労働者
(3)全額
(4)毎月1回以上
(5)一定の期日を定めて支払わなければならない
例外として、労働者の同意を得た場合は銀行口座への入金が認められており、現在はこれが主流となっております。「給与デジタル払い」とは、この支払い手段に新たな例外として資金移動業者の提供する「○○Pay」や「電子マネー」などの手段が追加されることになります。労働者の同意を得ずに、支払先を決めるといったことは出来ないわけで、あくまで支払先として、「給与デジタル払い」が選択できるようになるだけの話です。
あとは以下の記事を紹介します。
具体的な方法については以下のように書かれております。
3:具体的な方法は?
資金移動業者が発行するプリペイド(前払い)式の給与振り込み用カード「ペイロールカード」の導入が想定されている。企業は銀行などの金融機関を経由せずに直接ペイロールカードの口座に振り込むことができる。こうしたペイロールカードをPayPay、LINE Pay、メルペイなどといったキャッシュレス決済事業者のサービスと接続して、給与を残高として扱えるようになれば、買い物でスマホ決済がしやすくなる。ATMなどで現金を引き出すことも可能だ。ちなみに米国では、ペイロールカードがすでに普及している。
資金移動業者が発行するペイロールカードの口座に振り込まれて、ここからキャッシュレス決済事業者のサービスやデビットカード(カード決済)、そしてATMから現金として引き出すことも可能となっており、ペイロールカードがあれば、銀行口座と同様の機能を持つことが可能となっております。この制度については、どちらかといえば、銀行口座開設が難しい外国人労働者を主なターゲットとして挙げているといったところになるかと思います。
厚労省の資料を紹介します。
○資金移動業者の口座への賃金支払について
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000663599.pdf
○資金移動業者の口座への賃金支払について 課題の整理②
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000754522.pdf
この資料を見れば、外国人材の受け入れの方策としてこの制度が設計されてるように見受けられます。
課題については以下となります。
ここらへんの課題をどのようにするかというのが鍵となりますが、外国人労働者や、スポット雇用の場合などには、こういった支払い方法は有益なものでもあるのも事実ですし、以下のように使われることが想定されております。
給与のデジタル払いは、あくまで支払先の選択肢を増やすもので、外国人向けやスポット的なものではそういった需要はあるとは思いますが、基本的には日本人は銀行口座を所有しており、給与の定期払いが一般的であることから、デジタル払いによるインパクトはないと思いますし、実際問題、給与のデジタル払いが解禁されたとしても、既存の銀行などへの影響については殆どないと思われます。給与の定期払いの支払先を資金移動業者に変更するような要望があるとは思っておりません。
労働者にとっての問題としては、銀行振込を希望している労働者に対して、デジタル払いを強要されないといったところが大きな問題になると思います。あとは支払形態の変更あたりなど、「賃金支払の五原則」が守られるかどうかが重要になってくると思います。