今日はイラン関係です。中東情勢は難しいので、過去記事も紹介しときます。

イラン訪問の件-ぱよぱよ日記

中東情勢1-ぱよぱよ日記

中東情勢2-ぱよぱよ日記

ここで先月の中東の会談などの動きとなります。

鈴木外務副大臣の中東訪問(結果) | 外務省
(イスラエル,レバノン,パレスチナ,ヨルダン)

日・イラン首脳会談(令和元年12月20日)

茂木外務大臣とジュベイル・サウジアラビア外務担当国務大臣との会談 | 外務省

木原内閣総理大臣補佐官のトルコ訪問(結果) | 外務省

若宮外務副大臣のアラブ首長国連邦ナショナルデー・レセプション出席 | 外務省

そして75分話した日米電話会談も重要です。

日米首脳電話会談 | 外務省

先月の中東の外交関係者の動き、そして日米首脳電話会談で75分の間に何を話したかとなれば、状況からみても、中東関係の話に重点を置いてた可能性が高いです。アメリカにおいて、今重要なテーマはイラン問題であって、北朝鮮問題ではないです。アメリカも北朝鮮についての優先度は低いのも見据えて挑発しているわけです。

イランについては、以下の記事を再掲します。
2020年適当展望~国外編-ぱよぱよ日記

イランはテロ国家であり、テロの中央銀行でもあるという一面があるため、以下の基本戦略は外せないとも言えます。

①イランと取引を続ける企業の米国市場からの締め出し
②米金融市場(ドル取引)からの締め出し
③イランとの取引を隠して米市場に参入した企業・経営者に国際水準を 上回る厳しい刑事罰を科す
④上述の軍事圧力を通じた制裁の実効性確保

基本的に経済制裁の徹底がメインともなりますが、ここらへんは中国も一緒なんだけど、日米による役割分担があるので、認識ギャップではないと思うけどね。時間はかかりますが、資金ルートを潰さない限り、交渉のテーブルにはつかないので、こういった作業が行われることになります。
外交関係者の直近の動向、そしてイランだけの話ではないが、対話による解決のためには、敵対勢力の資金ルートを封じ込めることこそが、平和にとっての近道であるということが重要なポイントとなります。


改めて、以下の記事を紹介します。
イラン発火点の世界大激動も【2020年を占う・中東】 | NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]

イラン問題については、日米間で大きな認識ギャップがある。トランプ政権は、イランに対し「最大圧力」で臨む姿勢を強めている。旧ソ連国家保安委員会(KGB)のイラン版と言える革命防衛隊の対外工作部門コッズ部隊による破壊活動と共に、ヒズボラ(レバノンが拠点)、フーシ派(イエメンが拠点)はじめシーア派武装集団に資金・武器援助してきたイランは、まさにテロ国家であると同時に「テロの中央銀行」でもある。
前書きが長くなりましたが、革命防衛隊の対外工作部門コッズ部隊による破壊活動といった点が、先日の革命防衛隊の指揮官殺害の背景ともいえます。

革命防衛隊司令官殺害の記事を紹介します。
米軍、イラン革命防衛隊司令官を空爆で殺害 報復行動は必至 - 産経ニュース

 【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省は2日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を攻撃し殺害したと発表した。同省は詳細を明らかにしていないが、ロイター通信は、イラクのバグダッドの国際空港で3日未明、ソレイマニ氏らが乗った車列が空爆され、同氏やイラクの民兵組織幹部らが死亡したとしている。

 国防総省報道官は声明で、攻撃はトランプ大統領の命令で実行されたとし、「外国の米要員を守るための果断かつ防衛的な措置だ」としている。

 ソレイマニ氏は、イスラム教シーア派武装組織の支援などを含むイランの対外工作を統括してきた重要人物。米国が同氏を殺害したことで、イランが報復行動に出るのは必至とみられ、中東情勢が緊迫化する恐れが強まってきた。

 国防総省はソレイマニ氏とコッズ部隊について「何百人もの米軍と多国籍軍の兵士を殺害し、数千人を負傷させた」と指摘。米民間人1人が死亡し米兵4人が負傷した、昨年12月27日のイラク北部キルクーク近くの基地に対するロケット弾攻撃を含め、過去数カ月間のイラク国内での多国籍軍の基地に対する攻撃を首謀してきたと非難した。

 12月末のバグダッドの米大使館襲撃もソレイマニ氏が命令したとしている。

 今回の空爆の狙いについて国防総省は「イランによるさらなる攻撃を抑止するため」とし、「米国は、世界のあらゆる場所で米国民と米権益を守るため、全ての必要な阻止を講じていく」と強調した。

 米国務省はコッズ部隊を「外国テロ組織」に指定している。
関連記事を何個か紹介します。


この人物はイランの対外工作を担う精鋭組織のコッズ部隊を率いており、コッズ部隊はテロ組織と認定しており、革命防衛隊に対しても、テロ支援団体に指定されております。


実際に米国人も被害にもあってたわけで、「外国の米要員を守るための果断かつ防衛的な措置だ」の言葉の通り、革命防衛隊の対外工作部門とされるコッズ部隊の指揮官を殺害するというのは、革命防衛隊の中核を弱体化させるためにも効果的な方法ともいえます。

殺害された司令官について紹介します。

これがどれだけの効果があるかというのは、以下のツイートからみても明白です。


この人は最高指導者ハメネイ師に次ぐ権力者であるということからも、この人物を殺害したというのはかなり意味が大きいと思います。

革命防衛隊について触れておきます。
イスラム革命防衛隊 - Wikipedia

イラン・イスラム革命後、旧帝政への忠誠心が未だ残っていると革命政権側から疑念を抱かれた国軍(ペルシャ語:ارتش、Artesh)への平衡力として、アーヤトッラー・ホメイニーの命令により、1979年5月5日に創設された。革命防衛隊は国防省ではなく革命防衛隊省の統制下にあり、国軍とは別に独自の陸海空軍、情報部、特殊部隊(ゴドス軍、後述)、弾道ミサイル部隊等を有し、戦時には最大百万人単位で大量動員できる民兵部隊「バスィージ(ペルシャ語:بسيج、Basij)」も管轄している。さらに多数の系列企業を持っている(建設・不動産や石油事業を営む複合企業ハタム・アルアンビアなど)。
革命防衛隊は国軍とは別に独自のルートで作られており、多数の系列企業を持っていることからも、実態的には、革命防衛隊こそが、イラン国家内におけるディープステートといった存在となります。ここは政治的にも経済的にも大きな影響はあるし、この組織をハメネイ師が統率しきれてたかといわれるとかなり疑問です。当然、ローハニ大統領も抑えてるわけではないし、そういう意味でも、イランを抑える上で重要なポイントであったのが、ソレイマニ司令官の殺害にあったともいえます。ここらへんは、ハメネイ師も承知してたかもしれません。

昨年の安倍首相とハメネイ師と50分会談しております。以下の内容も結構重要です。
安倍総理大臣とハメネイ最高指導者との会談 | 外務省

1 冒頭,安倍総理から,ハメネイ最高指導者にお会いでき嬉しく思う,1983年に父の安倍晋太郎が外相としてイランを訪問した際には,当時大統領を務められていたハメネイ最高指導者にも表敬した旨述べました。これに対し,ハメネイ最高指導者から,安倍総理のイラン訪問を歓迎する旨発言がありました。

2 その後,安倍総理から,ハメネイ最高指導者に対し,軍事衝突は誰も望んでおらず,現在の緊張の高まりを懸念していることを伝え,また,安倍総理から,日本は核合意を一貫して支持しており,イランがIAEAとの協力を継続していることを評価し,イランが引き続き核合意の履行継続を期待している旨述べ,イランは地域の大国であり,中東の安定化に向け建設的な役割を果たすよう要請しました。ハメネイ最高指導者からは,平和への信念を伺うことができ,また,核兵器は保有も製造も使用もしない,その意図はない,すべきではない旨の発言がありました。

3 日本のエネルギー安全保障上,中東地域は死活的に重要であり,イランは同地域の安定の要です。中東地域における緊張が日増しに高まっている中で,安倍総理から,直接,ハメネイ最高指導者に対し,緊張緩和と情勢の安定化を意を尽くして働きかけることができ,地域の緊張緩和に向けて,時宜を得た有意義な会談となりました。
イランも国益で考えたら、親米にはなれなくても、一定の和解をして国際社会の一員として生きるほうが豊かになれますし、今までの路線で、原油の資源があっても、有効活用しきれてないどころか、経済制裁によって国益を損ねてる部分もありますし、今の状況ではイラン国民が豊かになれていないのは確かだと思います。

実際のところ、イラン人にとって革命防衛隊は嫌われてる存在かもしれません。

翻訳は以下となります。
これらは、海外のイランロビーとイラン政府があなたに聞かせない声です。イランの中には、それを喜んでいる人がたくさんいます。イラン人は革命警備隊を嫌うくらいです。
腐敗や制裁を招いてる要因として、革命防衛隊にあると考えるイラン国民は少なくないと思いますがね・・・。


とはいえ、現状では対米報復が広がる流れになるのが現実です。

イランのトップ2とも言われる人が殺害されたことからも、対米報復については必至ともいえる流れともいえるというか、テロ国家であると同時に「テロの中央銀行」というのを解体するためには、革命防衛隊の弱体化が重要ですし、アメリカの今の取り組みを支持することが近道であるのは確かなのと、イラン側の対応も限られた形で自制されたものであるということを願うしかないでしょうね。


イランの動きはゴーンとの関係とも無関係ではないでしょう。

力学の関係もありますが、手を付けないといけない部分はある程度可視化されつつあるし、今が正念場ともいえる状況ともいえます。

その上で、安倍首相の中東訪問も一つの鍵ともいえます。