今日も米中関係です。
米中、6日に制裁関税 中国「米の発効後ただちに」  - 産経ニュース

 【北京=西見由章】米中両国は6日、互いに相手国からの輸入品に追加関税を課す制裁措置を発動する。中国税関総署は5日、米国製品への追加関税措置について「米国側の追加関税措置が発効後ただちに実施する」との声明を発表した。米中が制裁措置を応酬することで、貿易摩擦がさらに強まることは必至だ。
(中略)
 中国商務省の高峰報道官は5日の記者会見で、米国が発動する818品目、340億ドル(約3兆7600億円)相当の中国製品への追加関税のうち約59%にあたる200億ドル相当以上は米国を含む外資系企業が生産していると指摘。「米国は世界や自国を攻撃しようとしている」と批判した。

 米国は6月、中国による知的財産権の侵害を理由に7月6日から一部の中国製品に25%の制裁関税を課すと発表。中国も6日から同規模の対抗措置をとると応じていた。
因みに品目は以下のリンクが参考になります。

7月に対中関税発動 米、500億ドル分の詳細公表 (写真=AP) :日本経済新聞

これを見ると、アメリカ側の第一弾は産業ロボットや電子部品などハイテク製品を中心に818品目、中国側は米国産の大豆、牛肉、航空機、自動車など106品目となっております。アメリカは耐久消費財中心で、中国側は生活必需品が含まれております。食品価格が高騰し、低所得者などに打撃がいく形になることが予想されることから、長期戦になればなるほど、中国が不利になるのは確かかと思います。

中国が抱えるもう1つの時限爆弾「食糧問題」:日経ビジネスオンライン

中国が抱える意外な弱み「食料自給率の低下」 米国が本気で怒ると中国人の食生活に何が起きるのか | JBpress(日本ビジネスプレス)

特に大豆が結構危険のように思います。JBpressの記事によると、「中国の大豆輸入量は6000万トンを上回り、世界で交易される大豆の6割にもなっている」わけで、大豆の輸出シェアは、ブラジルとアメリカで4割ずつを占めてます。そういう意味では、人口が多い分食糧問題は深刻であって、それが弱点であるといえます。


重要なポイントは、この件は普通の貿易戦争という構図ではないわけです。カネとハイテク両面での対中封じ込めでもある事が主目的であって、アメリカ側の狙いは、中国が巨額補助金を拠出してハイテク産業を育成する「中国製造2025」計画そのものにあって、その裏には、米国に限った話ではないのですが、中国は不公正な手法で技術や知財を得ていることにあって、日本も例外ではないわけですね。

アメリカも中国からの輸入が、米国企業が中国で生産しているものを輸入しているということは理解しているからこその関税なわけです。どちらかといえば、中国というより、中国で生産している米国企業に向けたメッセージで、米国企業の技術や知財を中国で使用することについて制限をかけることが目的とした関税なわけです。コスト的なメリットがなければ、他国に移転するでしょうし、他の国であれば変な制約はないでしょうし、出来れば米国企業が中国で生産したものを輸入するのではなく、米国人が使うもので代用可能なものは、出来るだけ米国内で生産するのが理想ともいえます。

因みに中国については場当たり的対応というか、金額合わせのために無理をしている部分があって、関税をかけた場合、中国の輸入業者が実質的に関税を負担することになる可能性が高くなります。特に大豆は輸出シェア的にアメリカに依存する必要があるため、中国側が関税をかけたとしても、負担するのは中国企業となります。

元々関税というのは、輸入した業者にかけられるもので、代用可能なものを輸入するか、代用出来ないものを輸入するかによって性質が異なります。アメリカは中国以外で生産すれば関税回避は可能ですが、中国は米国に依存しないといけないため、関税回避は出来ないという構図になるわけですね。


この構図を踏まえて、以下の記事を見ると分かりやすいと思います。部分抜粋。

貿易戦争懸念…揺れる上海市場 チャイナショックに慌てるな 編集委員・田村秀男(1/2ページ) - 産経ニュース

 トランプ政権は5月初旬の北京での米中貿易協議で、対米貿易黒字(米側統計で昨年3750億ドル)の2千億ドル削減要求を突きつけた。6月には、ハイテクなど中国からの輸入品2千億ドルに追加関税をかける準備を始めた。上海株価と人民元相場は貿易戦争懸念とともに下落を続けている(グラフ参照)。



 習国家主席は「殴られたら殴り返す」と強気だが、中国の成長モデルは極端なドル依存だ。中国人民銀行は流入するドルを原資に人民元を発行し、金融を量的拡大してきた。米国のハイテク企業買収、中華経済圏構想「一帯一路」向け投資も外準がよりどころだ。
中国の成長モデルは極度のドル依存で、アメリカの反撃もドル依存の中国に対して、基軸通貨を活かした戦略を取っております。AIIBも一帯一路もドルが必要なのを、人民元で補完するというのが目的とも言えます。人民元を維持するなら、外貨準備高を使う必要があるし、資本逃避を避けるためにも食い止めるためには外貨が必要という状況なので、人民元の動ける許容範囲は結構少ないし、急激な相場変動については、日本以上に脆弱ともいえます。外貨準備高を減らすか対外負債を増やさないといけないのが現状で、チャイナマネーというのは一種の幻ともいえるわけですね。

上記の記事の以下の部分。
 国有企業など中国産業界は世界でもダントツの借金依存経営で、国内外からの借金は昨年末20兆ドルを超えた。対米貿易戦争に伴って輸出機会が減れば、債務不履行が続出しかねない。高関税に伴う輸出競争力低下を相殺するための窮余の一策は人民元切り下げしかないが、外貨債務負担は増え、金融危機の引き金を引きかねない。当局は人民元を買い支えているが、グラフが示すように下落が止まらない。資本逃避が加速しつつあるようだ。
今回の関税については、米国企業の米国への輸出が狙われたことからしても、輸出機会が減れば、中国の製造してたものが減ることになります。結局は中国から製造業が逃げ出すことになって、輸出機会どころか、製造能力が維持出来ない状況になると思います。債務不履行が続出すれば、対外資産を売却を求められることになります。

一見いつか日本の通った道のように見えますが、本質は全然異なります。

中国大手の「海航集団」が債務危機。バブル崩壊が日本に酷似してきた - まぐまぐニュース!

日本のバブルは対内債務であって、中国のバブル対外債務となります。そして、別の要因もあるので、日本が対内債務であっても傷跡は大きかったけど、中国は対外債務なので、日本のバブル崩壊より厳しい状況になると思います。因みにここに日本の抱えてる問題の解決策もあるわけですね。中国が購入した日本の土地を取り戻すため方法にもなりますので、この点も踏まえて、動向を見極める必要があると思います。