トヨタとソフトバンクの配車サービスに関する提携の件です。
トヨタ・ソフトバンク 配車サービス新会社発表  :日本経済新聞

ソフトバンクグループとトヨタ自動車は4日、自動運転技術などモビリティー(移動手段)に関する新たなサービスで提携し、共同出資会社を設立すると発表した。自動運転車を使った配車サービスなどの分野で協力する。

4日午後、都内で記者会見したソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は「モビリティーで世界一のトヨタと、AI(人工知能)のソフトバンクが新しく、進化したモビリティーを生む。これは第1弾。今後、第2弾、第3弾の提携も狙っていく」と述べた。

トヨタ自動車の豊田章男社長は「100年に1度の大変革の時代を迎えている。変化をもたらしているのはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)だ。車は社会とつながり、社会システムの一部になる。車を作る会社からモビリティーサービス会社に変わることを宣言した。そのために、ソフトバンクの提携は必要不可欠だ」と話した。

両社は共同出資会社「モネ テクノロジーズ」を設立し、2018年度中に事業を開始する。出資比率はソフトバンクが50.25%、トヨタが49.75%となる。新会社は企業向けの配車サービスのほか、データ解析サービスなどを展開していく予定だ。
トヨタとソフトバンクの提携の件ですが、トヨタの提携方針としては同業他社問わず有益なものは提携するが必要なければ、提携を終了といった感じで、部分特化で柔軟に進める傾向があります。以下のニュースを紹介。

トヨタ、マツダ・BMW提携見直し 駆動系で供給停止・調達終了(ニュースイッチ) - Yahoo!ニュース

今回の提携というのも、ホントに発表内容そのままで、それ以上でもそれ以下でもないと思われます。重要と思われる部分を抜粋。
データ争奪、車にも 移動革命にらみトヨタ・ソフトバンク提携  :日本経済新聞

ソフトバンクは米ウーバーテクノロジーズや中国の滴滴出行などライドシェア大手4社の筆頭株主で、乗車回数でみた世界シェアは9割に上る。こうしたシェアサービス大手に対し、トヨタが開発した自動運転車の導入を呼びかけることも視野に入れる。

トヨタは自動車の開発・安全技術に強みを持つほか、世界で約1千万台を売る顧客基盤から得られる走行データも多い。ただ単独の技術開発には限界もある。自動運転に必要な通信用の半導体設計に強い英アーム・ホールディングスを傘下に抱えるソフトバンクと連携し、巻き返しを図る。
トヨタ的には、ソフトバンクはライドシェアの大手4社の筆頭株主で、こういったシステムやデータのノウハウは重要ですし、ソフトバンクはARMが傘下にあることから、車載用の半導体製造に関しても連携が取れるので、それなりに有益となります。

ソフトバンク的にはトヨタの車両開発技術、顧客用の走行データなどの魅力もあることから、ライドシェアに関してのシェアを広げるためにも、トヨタの看板というのは大きいですし、Win-Winの関係の提携を目指して、共同出資会社を設立するといった内容となります。あくまでライドシェア関係の車両に限っての提携ですし、これから成長するかもしれない市場になる可能性はあるともいえます。

日本の自動車シェアリングの動向となります。この資料が分かりやすいと思います。

自動車シェアリングの動向 - 三井住友銀行

カーシェアとライドシェアの違いは以下となります。


カーシェアは車両提供で、ライドシェアは配車仲介/旅客運送といったサービス内容となります。競合相手は前者がレンタカーで、後者がタクシーとなります。

日本のカーシェアリングの動向となります。

カーシェアリングとしても、国内の市場規模については300億程度と言われており、事業規模としてはそこまで言うほど大きくはありません。

そしてライドシェアについては、タクシー業界の関係もありますが、利用者の安全確保等の観点から自家用車を用いるライドシェアリングは「白タク行為」として禁止されており、政府は交通不便な過疎地域等に限り自家用車による旅客運送を認めております。

ライドシェア業界の相関図は以下となっております。


ライドシェア関係の記事を紹介します。

市場規模が世界中で大きくなっているライドシェア戦国時代の勢力図をまとめてみた | カラクリンカム

ライドシェア市場「10兆ドル」突破へ 移動の未来に関する調査 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

ライドシェア実現に向けて - 新経済連盟

ライドシェアの規模は拡大はしておりますが、安全面や事故等のトラブル対応など課題が残されております。日本国内においては、白タク規制なども課題となります。となると、今後のシェアの鍵としては、「白タク行為」は解禁はされる可能性は殆どないことから、過疎地の公共交通機関の置き換え、公共交通機関における自動運転と走行データに関する内容に特化されることが予想されます。

そしてバス運転手の人材不足が今後の課題ともいえます。

深刻さを増すバス運転手の人材不足 - NAVER まとめ

ここらへんの事情を踏まえて考えると、自動運転技術や配車情報システムに関しては、一定の可能性は秘めた分野ではありますが、技術的な課題、法的課題などがあることから、一企業で補うことは難しいのが現実です。無人化技術において、ハードとソフトのあるべき姿を模索する意味合いでの提携は一定の意味はあるし、日本の打ち出すソリューションとしても可能性が見込める提携と思っています。