今回は水道法改正の件です。この件は去年書いてたので再掲。

水道法改正|ぱよぱよ日記

要点はある程度書いたつもりなので、別の観点からも・・・。
水道民営化に根強い抵抗感 料金高騰、水質悪化…海外では暴動も(1/2ページ) - 産経ニュース

 水道の基盤強化を図る水道法改正案について、政府・与党は今国会で成立を目指す。人口減少で料金収入が減少するとともに、事業を担う人材も不足するなど、水道事業は深刻な危機に直面している。その突破口として政府が打ち出したのが、民間の資金や能力を活用する「コンセッション方式」だ。しかし、運営を民間に委ねる“民営化”には、住民の抵抗が根強い。

 「住民の福祉とはかけ離れた施策である。国民の生命と生活に欠かせない水道事業は民営化になじまない」。新潟県議会は10月12日、水道法改正案に反対する意見書を可決。野党系が発案したものだが、最大会派の自民党が賛成するという異例の決断だ。

 民営化が進展すれば、海外から「ウオーターバロン」(水男爵)や「水メジャー」と呼ばれる巨大な水道事業者が日本に押し寄せるという懸念もある。

 海外では、民営化後の悪影響が報告されている。厚生労働省などによると、米アトランタでは、1999年に民間が水道の運営権を取得したが、施設の維持費がかさんで水質が悪化し、4年後に再び公営に戻された。この15年間で30カ国以上で再公営化されているという。

 南アフリカでは民営化後、料金高騰で支払えない約1千万人が水道を止められ、汚染した河川の水を使いコレラが蔓延(まんえん)。ボリビアでは料金が跳ね上がり暴動が発生したケースもある。

 厚労省は、民間が運営しても管理がずさんにならないように、定期的なモニタリング(監視)や立ち入り検査を実施。水道料金の枠組みは自治体が事前に条例で定めることなどを示し、理解を促している。地震などの災害時の復旧は、自治体との共同責任にした。  日本の水質の高さや漏水率の低さは世界トップレベルの技術力のおかげであり、厚労省は「日本版の水メジャーの育成にも寄与できれば」ともくろむ。

 水道事業に詳しい近畿大の浦上拓也教授(公益事業論)は「コンセッション方式は、自治体にとって選択肢が一つ増えるという意味で評価したい。ただし、これが最善の方法ではない。水道料金は必ず上がっていく。事業を継続させるため何が必要か自治体は議論を進めていく必要がある」と指摘した。


一応背景については前回の記事を引用します。
水道法改正|ぱよぱよ日記

水道事業そのものについては広域化の流れも出ております。厚生労働省の平成16年6月に「水道ビジョン」を紹介します。

水道広域化検討の手引き

水道事業は今まで自治体単位となっておりますが、設備老朽化などの問題もあって、設備更新が必要なんだけど、自治体による問題もあって、現実的に対応が難しいという状況にあります。その為に、広域化や民営化などの手法を通じて、設備更新も含めた効率化の方法として、改正案が必要になるのが背景にあります。

新旧対照条文を見る限り、業者が好き勝手に参入して料金も好き勝手にしていいというような内容ではなく、相応の責任を求める内容になっております。正直なところ、今回の改正を受けて、民間企業の参入が加速するとまでは限らないと思います。料金問題も厚労省への報告は必要だし、事業内容の透明化と水質調査など一定の義務がある以上、そこまで言うほど、民間企業が好きに出来るような内容ではないと思いますので、過剰反応はする必要はないように思います。
現状としてはこんなところです。

横浜市も悩む「水道の老朽化問題」の行方は? | 週刊東洋経済(政治・経済) | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

横浜市は人口の多い自治体ですが、予算不足で老朽化した水道管の更新に苦慮しているのが現状です。他の自治体でも苦慮しているところが大半で、自治体単位ということで、料金の格差も激しいのもあって、この枠組みそのものも問題ともいえます。最も、水道料金は行政サービスの一環もあって、安価で提供されているインフラであるということも重要で、設備更新の予算を削ることで、維持出来ているのが実情です。現状と課題については、総務省の資料も参考になると思います。

・水道事業についての現状と課題
http://www.soumu.go.jp/main_content/000562829.pdf


あとこちらの記事も紹介します。

日本人は知らない「水道民営化の真実」フランスと英国で起きたこと(橋本 淳司) | マネー現代 | 講談社(1/3)

失敗例としては参考になると思います。

水道法改正の概要は以下となります。

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/193-26.pdf


一応海外の事例を踏まえて、主体となるのは自治体であり、料金は厚労省への報告が必要だし、設備は自治体が所有することになることから、設備の投資や運営の一部の機能を官民合同の「コンセッション方式」といった形で運営することを軸に置いております。

コンセッション方式について、以下のページを紹介します。

コンセッション方式の意義や利点(メリット) | ジャパンウォーター

コンセッション導入により期待されるメリット | ジャパンウォーター

コンセッション導入により留意すべき課題 | ジャパンウォーター

課題ですが、官民合同というのは、公共サービスと営利活動は相容れない部分もあり、どちらかに偏重すると、利用者のメリットを損なう恐れもあることから、制度設計が重要で、うまくバランスを取らないと制度として破綻します。民間企業だと慈善事業ではないので、利益を出すための枠組みが必要ですし、逆に自治体が赤字を抱え込むと、財政悪化からの行政サービス低下の可能性が出てきます。

料金の抑制も必要なのと同時に、採算性の問題から、事業者の撤退を招く事態も避けたいところですし、事業リスクを考慮した場合、コンセッション方式を採用したとしても、自治体がある程度のバッファは必要となります。

官民といっても、双方にメリットとデメリットがあることから、事業の性質や実態を考えて、どのような方式が適切なのかというのは変わってくるし、民営化というのは魔法ではないですし、民営化すればよくなるとかいう図式でもないです。郵政民営化については、何のメリットはなかった事例ともいえます。

騙された?郵政民営化は国民にも郵便局にも全くメリットがなかった! - NAVER まとめ

ライフラインにおいては、電気やガスは民営化で運用出来ているので、そういう意味では、民営化出来るか出来ないかは制度だったり、全体の枠組み次第ともいえます。


水道事業の場合、地方自治体が主体となる枠組みは変わりませんので、業者として関われる範囲としては限られるのと、設備投資についても、日本の場合は災害も少なくないことから通常の設備投資に加え、災害復旧も備えて水道事業を運営する必要があります。そういう意味では、水道事業については自治体任せでやってきたのもあって、設備を含めた形の民営化は難しいし、現状の枠組みを維持した形が最適とも言えます。

そういう意味では、事業の観点から考えても、民間企業を参入させたとしても、運営そのものも難しいことから、参入出来る企業も限られると思います。実際問題、水道事業の一部の運営において、外資が関わってる案件もありますが、現状問題は起きていません。PFIを通じた運営において、水道の広域化や事務処理の効率化などの手法で、コストの削減あたりが落とし所になると思われます。