今日は日産の件です。
ゴーン日産会長を逮捕、報酬50億円過少記載か : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 日産自動車(本社・横浜市)会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の役員報酬を有価証券報告書に少なく記載したとして、東京地検特捜部は19日、ゴーン容疑者と同社代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者(62)を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕し、日産本社を同法違反容疑で捜索した。5年間で計約50億円を過少に記載した疑いがあり、特捜部は今後、経緯などを詳しく調べる方針。

 日産は同日、虚偽記載のほか、ゴーン容疑者が会社の資金を私的に支出するなど、「複数の重大な不正行為が認められた」と公表。不正にはケリー容疑者が深く関与していたとし、同社は「両容疑者の職を速やかに解くよう取締役会に提案する」とコメントした。

 特捜部の発表によると、ゴーンとケリー両容疑者は、2011年3月期~15年3月期のゴーン容疑者の役員報酬が計約99億9800万円だったにもかかわらず、計約49億8700万円と有価証券報告書に虚偽の記載をした疑い。
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日産のカルロス・ゴーン氏が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕されました。内部通報に基づき、数か月間にわたって検察と内部調査を進めており、その結果、以下の事実が判明したようです。

〈1〉実際の報酬より少ない金額を有価証券報告書に記載
〈2〉私的な目的で日産の投資資金を使用
〈3〉会社の経費を不正使用

検察と調査していた地点で、日産としてもいろいろと思う部分があったと思います。国内市場はズタズタにされたし、売れそうな車だけで面白みのない車ばっかになっていて、こんな状況になってたわけです。

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ルノーとの提携の経緯として、1999年3月に、フランスの自動車メーカーのルノーと資本提携を行い、ゴーン氏の手腕で日産は倒産を免れた(2003年6月に負債を完済)とありますので、恐らく自力再生も可能だったかもです。最も低迷した原因としては、マーケティングや採算を度外視して、技術に比重を置きすぎて経営戦略がなかったことが原因とは思いますし、バランスが悪かった事に起因してるので、コストカットそのものは必要であったという一面は言うまでもないです。

他の国内事情の要因として、バブル崩壊後に細川→羽田→村山→橋本とお粗末過ぎる政治事情もあったのと、1998年の日銀法改正なども背景にもあると思われます。平成初期の政治の状況はカオス過ぎたと思いますがね。民主党政権の3年3ヶ月の悪夢といいますが、平成初期も結構酷かったと思いますがねwww


脱線しましたが、日産となれば、こんなことがありました。
日産「200億円申告漏れ」指摘 処分不服で審査請求 - FNNプライムオンライン | This kiji is

日産自動車が、東京国税局から海外の子会社をめぐって、およそ200億円の申告漏れを指摘されていたことがわかった。

日産自動車は、2017年の税務申告で、法人税率の低いタックスヘイブン(租税回避地)であるバミューダ諸島の子会社をめぐり、およそ200億円の申告漏れを指摘された。

東京国税局は、子会社の利益も日産の利益に合算するべきと指摘し、追徴税額は50億円余りとみられる。

日産自動車は、「当社の処理は適正であったと認識している」とコメントしていて、この処分を不服として、国税不服審判所に審査請求を行っている。

租税回避地の案件ということで、こんなニュースがありました。
邦人の資産隠し調査 国税庁 海外口座、40万件情報入手 :日本経済新聞

国際的な脱税や租税回避を防ぐために経済協力開発機構(OECD)が策定した新制度を使い、国税庁が約50カ国・地域の金融機関にある日本人の口座情報約40万件を入手したことが14日、関係者への取材で分かった。租税回避地(タックスヘイブン)の情報も含まれており、今後、国境をまたぐ資産隠しなどの解明に活用する。
そういう意味では、タックスヘイブンを利用した資産隠しについては、情報は共有されていることから起きたともいえます。高額報酬もそうだし、租税回避の関係もあって、日産は目を付けられてたのもあって、今回の件の発覚に繋がったかもしれません。

金融商品取引法違反もそうだし、不正な資金流用の規模からしても、実刑判決は逃れられないと思います。ゴーン氏個人に権力が集中しすぎたことで日産を私物化したことから、巨額の不正行為が行われたことからも、今後のコンプライアンスの観点からも、権力構造を是正化する必要があるともいえます。

他の不祥事としてこんなことがありました。

・日産「無資格検査」を誘発した、時代遅れの国交省の認証制度

・日産、断てぬ不正 排ガス試験でも発覚

無資格検査については、認証制度そのものの問題なので複雑な一面はありますが、排ガス試験での不正については、コストとの兼ね合いもありますが、そういった社風になっていたという点から考えると、日産内部でいろいろと問題を抱えていたともいえます。


今後の日産についてですが、今回のゴーン氏の失脚については、ルノー側も日産側の双方にとって、いい一面と悪い一面の両方があります。
ゴーン氏変心か ルノーと日産にすきま風  :日本経済新聞

仏ルノーと日産自動車の関係がぎくしゃくし始めた。ルノーの筆頭株主である仏政府が同社の経営陣に日産との経営一体化を進めるよう圧力を強めているためだ。経営の独立性にこだわる日産では両社の会長を兼務するカルロス・ゴーン氏が仏政府寄りに傾き始めたことに警戒感が広がる。


あとこちらの記事を紹介します。

・フランス政府が描く、日産・支配シナリオ…「日産・三菱自の経営統合+ルノー傘下入り」案も

・安倍首相と仏大統領、日産・ルノー合併めぐり協議か

・ルノーと日産自の関係、「近い将来にはっきりさせる」-ゴーン氏

・日産はルノーに「吸収合併」されてしまうのか

記事を見る限り、西川社長はゴーン氏の傀儡みたいな感じで人望はなさそうで読めない部分はありますが、動向からみれば、フランス政府に日産が吸収されるシナリオで動くかもしれない動きのように見えます。

ルノーグループ各社の販売台数は以下となります。
ルノー・日産自動車・三菱自動車、2017年に合計1,060万台を販売 - 日産自動車ニュースルーム

ルノーグループは、2017年に前年比8.5%増の合計3,761,634台を販売しました。欧州第2位でフランスを代表するブランドであるルノーに加え、ダチアにとって過去最高の販売記録となりました。ルノーは2018年も「Drive the Future」計画に基づく国際的な取り組みや車種の拡大を通じた継続的な成長を目指しています。

日産自動車は2017年、6カ年の中期計画「Nissan M.O.V.E. to 2022」を開始し、全世界で前年比4.6%増となる5,816,278台を販売しました。このうち米国と中国での販売台数はそれぞれ前年比1.9%増、12.2%増となりました。インフィニティは2017年、前年比7%増の246,492台を販売しました。

三菱自動車は、2017年に前年比10%増の1,030,454台を販売しました。販売台数の増加は三菱自動車の中期経営計画「DRIVE FOR GROWTH」の重要市場である中国が牽引しました。現地生産の「アウトランダー」の強い需要にも支えられて中国での年間販売台数は前年比56%増の129,160台となり、同国が三菱自動車にとって最大の市場となりました。ASEAN地域での販売も、インドネシアで新型MPV「エクスパンダー」を発売したことなどにより、前年比17%増の242,224台と好調でした。日本では軽自動車の販売を再開したことにより、販売台数は前年比で7%増加しました。
これを見ると、ルノー・日産・三菱アライアンスにおける販売台数の比率として、ルノーが35%、日産が55%、三菱が10%程度といった感じとなります。三菱自動車の筆頭株主は日産なので、利益貢献度からいえば、日産・三菱の方が上なわけですね。そしてルノーの筆頭株主はフランス政府であることから、日産の支配はいろんな意味で厳しいともいえます。日本政府としても、フランス政府系の企業からの吸収合併は飲まないでしょうし、フランスにそういう意味で恩を売る理由は全くないです。日産の筆頭株主がルノーであるのは事実ですが、過半数の株式を持ってるわけではないしね。

そうなると、今までの連携を維持しながら、ゴーン氏体制の是正といった感じの連携がベストなのですが、今回の件で旗振りの出来る人を失ったことからしても、一定の混迷があるかもです。場合によっては、ルノーとの提携解除も視野に入れた方がいいかもしれません。どっちにしても痛みは伴うことになりますが、日産にとっても、決して悪いだけの話ではないと思います。