まずはこちらの件から。

保守速報の件

保守速報の上告棄却、李信恵さん「判例が差別解決に役立てばうれしい」 - 弁護士ドットコム

まとめサイト「保守速報」の差別的な表現で、精神的苦痛を受けたとして、在日朝鮮人で、大阪府在住のフリーライター、李信恵さん(47)が、サイト運営の男性に損害賠償をもとめた訴訟で、最高裁第三小法廷(宮崎裕子裁判長)は、男性の上告を棄却し、上告審として受理しないと決定した。男性に200万円の支払いを命じた1審・2審判決が確定した。決定は12月11日付け。

李さんは2014年、まとめサイト「保守速報」の掲載された表現で、精神的苦痛を受けたとして、サイト運営の男性に対して、損害賠償2200万円をもとめて提訴。1審・大阪地裁は2017年11月、記事が差別的な内容を含むと判断して、男性に対して200万円の支払いを命じた。2審・大阪高裁も2018年6月、1審判決を支持し、男性側が上告していた。

李さんは、弁護士ドットコムニュースの取材に「年内ギリギリに良い報告ができた。これで裁判は終わったが、日本には、人権問題、差別問題がまだまだあるので、今回の判例が差別解決に役立てばうれしい。これからもいろんなマイノリティの人たちと手をつないで、差別のない社会のためにできることをやっていきたい」とコメントした。
この件に関する記事を紹介します。

保守速報、最高裁にて敗訴確定【言論弾圧に抗議する人はシェア】 | 小坪しんやのHP~行橋市議会議員


この裁判の一番の要点としては、「まとめる」という行為を「独立した別個の表現行為」としたことを最高裁が認めた事に尽きます。まとめた人の意思が含まれる以上、自身の表現行為であるということをあるという判決ということを理由に、上告を棄却したというのが最高裁の棄却ともいえます。一個人に向けての名誉毀損や侮辱に関しての判決であって、差別問題というより、名誉毀損や侮辱行為に重点を置いてることが重要です。

一個人の名誉毀損や侮辱を目的とした内容を、まとめという形で自らの意思で記事を執拗に掲載したことについては、個人攻撃を目的としており、悪質性があるということを認めたというのが、今回の判決の趣旨ともいえます。それ以上の判断は裁判所として行っておらず、裁判の争点が、「まとめる」という行為を「独立した別個の表現行為」として成立するかに絞られたことに尽きます。

何が差別表現であるかではなく、その意図から個人に向けた名誉毀損や侮辱が明白であるというのが裁判所の判断であって、表現の内容そのものについては、裁判所では何の判断をしていないということも意味しております。「ヘイト認定」についても、その表現が個人攻撃であることを含めてるという意味も含まれており、在日女性への差別認定という集団的な内容ではなく、原告個人に向けた行為についての司法判断であるともいえます。

今回の最高裁の判決の意味は、「まとめる」という行為を「独立した別個の表現行為」としたことを最高裁が認めた事に尽きるし、その根拠としてあるものは、保守速報側が原告への名誉毀損や侮辱行為の意図で表現行為を示したと判断したという話です。

ここからが重要になりますが、「まとめ」は「独自の作品」と、司法からの認定を受けたに等しいわけで、表現の観点だと、まとめサイトだけではなく、メディアの報道も例外ではなくなるという根拠を与えたことにも波及します。そういう意味では、メディアの報道についても、名誉毀損や侮辱を目的とした表現については、賠償責任を負う必要があるということを最高裁が認定したことを意味します。そんなに簡単な話ではなく、メディアの報道被害に対して訴訟を行うための根拠にもなり得る判決であって、これを否定するなら、この判決は憲法違反に繋がるくらい重い事例とも言えます。

特定技能1号の件

新在留資格、8カ国で日本語試験 悪質仲介排除に政府間文書 - 産経ニュース

 政府は12日、外国人労働者の受け入れ拡大のために創設する新在留資格「特定技能1号」に関し、資格取得に必要な日本語試験をベトナムなど8カ国で実施する方針を固めた。人権保護や悪質ブローカーの排除を図るため、来年3月までに8カ国との間で捜査情報などを共有するための政府間文書の締結を目指す。

 関係者によると、8カ国はベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジアの7カ国に、調整中の1カ国。これらの国は現行の技能実習生制度での実績が多く、一部は実習生送り出しに関する政府間文書がすでに締結されている。

 改正出入国管理法の来年4月施行に合わせて創設される特定技能1号については、建設業など14業種が受け入れる予定。資格取得には日常会話レベルの日本語試験や、技能試験に合格する必要がある。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は12日の記者会見で「これまで技能実習生などの外国人労働者を受け入れてきた実績や14業種の要望を踏まえて、検討している」と述べた。

 政府は外国人労働者の生活環境整備の対応策や、業種を横断した全体的な受け入れの方向性を示す基本方針、受け入れ見込み数などを示した分野別運用方針を年内に策定する。
特定技能1号に関する件となります。人権保護や悪質ブローカーの排除を図るため、来年3月までに8カ国との間で捜査情報などを共有するための政府間文書の締結を目指すようですが、これに違反すれば、一切の受け入れを拒否するということを意味します。この条件を満たしていれば、受け入れを拒否する理由もないし、政府間文書が交わされる以上は、それを違反するというのは、政府間文書そのものが無効なものであったということを意味するし、以下の記事が前提になると思われます。

送還を拒否する国を除外 新在留資格で法相  :日本経済新聞

山下貴司法相は10日の閣議後の記者会見で、来年4月に創設する新たな在留資格について、日本から強制退去となった外国人の送還を拒む国からは労働者を受け入れない方針を明らかにした。不法就労目的の難民認定申請や不法滞在者が多い国も審査を厳格にする。山下法相は「不法残留をいたずらに生む制度であってはならない。適切に制度設計したい」と述べた。

法務省によると、日本国内の不法残留者は4年連続で増加している。不法滞在などで強制退去を命じられた外国人は、日本国内の施設に一時的に収容される。各国は国際慣習上、自国民の送還者を受け入れる義務があるが、一部に履行しない国もあり、収容が長引く要因になっている。新資格での受け入れに条件を設けることで不法滞在の増加を防ぐ。

不法残留者の状況です。
法務省:本邦における不法残留者数について(平成30年1月1日現在)

2 国籍・地域別不法残留者数(第1表,第2表,第1図,第2図)

 不法残留者数の多い上位10か国・地域は次のとおりです。
 平成29年1月1日現在から,国籍・地域及び順位に変化はありませんが,中国,タイ,ベトナム,マレーシア及びブラジルの5か国・地域は増加し,その他の5か国・地域は減少しました。
 (1) 韓国              12,876人 (構成比 19.4%) (- 2.9%)
 (2) 中国         9,390人 (構成比 14.1%) (+ 6.1%)
 (3) タイ           6,768人 (構成比 10.2%) (+ 4.0%)
 (4) ベトナム        6,760人 (構成比 10.2%) (+31.6%)
 (5) フィリピン       4,933人 (構成比  7.4%) (- 2.9%)
 (6) 台湾          3,784人 (構成比  5.7%) (- 2.6%)
 (7) インドネシア     2,076人 (構成比   3.1%) (- 6.6%)
 (8) マレーシア      1,784人 (構成比  2.7%) (+ 1.3%)
 (9) シンガポール    1,034人 (構成比  1.6%) (- 1.1%)
 (10) ブラジル        976人 (構成比  1.5%) (+ 1.8%)
        その他      16,117人 (構成比 24.2%) (- 2.7%)

4 不法残留者の退去強制手続の状況(第4表)

 不法残留者のうち,既に退去強制令書の発付又は出国命令書の交付を受けている者は2,887人(うち難民認定手続中の者1,067人)です。
 不法残留者数の多い上位10か国・地域の不法残留者のうち退去強制令書の発付又は出国命令書の交付を受けている者は次のとおりです。
 (1) 韓国             123人 (構成比  4.3%)
 (2) 中国             282人 (構成比  9.8%)
 (3) タイ                89人 (構成比  3.1%)
 (4) ベトナム        230人 (構成比  8.0%)
 (5) フィリピン        353人 (構成比 12.2%)
 (6) 台湾              16人 (構成比  0.6%)
 (7) インドネシア      63人 (構成比  2.2%)
 (8) マレーシア        16人 (構成比  0.6%)
 (9) シンガポール       8人 (構成比  0.3%)
 (10) ブラジル      145人 (構成比  5.0%)
    その他      1,562人 (構成比 54.1%)

難民申請の状況です。

基準を満たさない場合は受け入れることはできないし、基準になる人数を算定したとしても、その人数を受け入れるとは限らないです。基準に満たさない人に対して在留させることも問題とも言えるし、きちんと認定することが重要とも言えます。