パレスチナ関係に関する再掲記事です。

まずは背景について簡単に・・・。まずはWikipediaから。

パレスチナ問題 - Wikipedia

この件を考える上で、イギリスの三枚舌外交についても重要となります。
三枚舌外交 - Wikipedia

イギリスは第一次世界大戦中に戦後の中東問題に対して、以下の三つの協定を結んでいた。それぞれ、アラブ・フランス・ユダヤに配慮した内容であった。

1915年10月 - フサイン=マクマホン協定(中東のアラブ独立・公開)
1916年5月 - サイクス・ピコ協定(英仏露による中東分割・秘密協定)
1917年11月 - バルフォア宣言(パレスチナにおけるユダヤ民族居住地建設・公開)
要するに、全てに配慮した結果、文言以上の整合性が取れずに収拾がつかない状態になったというのが実態と思われます。相手にとっては、不誠意と受け取られて当然の協定というのが背景にあると思われます。

第一次世界大戦後にイギリスの統治領としてのパレスチナが誕生しました。

イギリス委任統治領パレスチナ - Wikipedia

そして、バルフォア宣言において、パレスチナにおけるユダヤ民族居住地建設というのが、揉め事の発端になるわけです。第二次世界大戦後に、イギリスの委任統治を終わらせアラブ人とユダヤ人の国家を創出する過程において、この問題が生じました。

パレスチナ分割決議 - Wikipedia


国連分割決議で1947年のようになるように決議は行い可決はされました。決議がユダヤ人とアラブ人の双方にとって受容できるものではないとして、その執行を拒否したため、戦いが繰り広げられることになりました。

最もユダヤ人にとっては有利な決議だったのもありますが、イスラエルが独立した時に、アラブ諸国との友好的関係を築こうとはしておりました。だが、アラブ人からすれば、到底受け入れることが出来なかったため、1948 - 1967の中東戦争となりました。

これが原因で、パレスチナ難民が発生することになりました。
パレスチナ難民(ぱれすちななんみん)とは - コトバンク

 中東戦争により発生した難民。国際連合パレスチナ難民救済事業機関( UNRWA )が支援活動を行なっている。

国際連合パレスチナ難民救済事業機関については、以下となります。
国際連合パレスチナ難民救済事業機関 - Wikipedia

組織と運営

UNRWAは国際連合機関の中でも最大の組織であり、29,000人を超える職員がいる。その内の99%はパレスチナ人の現地職員である。本部はガザとアンマンに置かれている。

UNRWAの予算は年間数億米ドルであり、そのほとんどは支援国が拠出している。ごく一部が国連から提供される。2012年度は6.55億ドルであり、最大は米国の2.33億ドル、次いで欧州委員会の2.04億ドル、その他イギリスやスウェーデンなどが続く。

UNRWAは国連総会の補助機関であり、その権限は3年毎に更新される。

あとは入植地もポイントとなります。
中東和平問題とは 経緯と争点 - BBCニュース

入植地: イスラエルは1967年以来、占領したヨルダン川西岸地区と東エルサレムに約140の入植地を設けている。このほか、非公式に作った121の「前哨入植地(アウトポスト)」もある。両方にはユダヤ教徒のイスラエル人が計60万人住んでいる。こうした入植地は国際法違反とされているが、イスラエルはこれに異議を唱えている。米政府も昨年11月、「国際法違反とはみなさない」と従来の方針を転換した。ネタニヤフ首相は入植地を温存するに留まらず、近くイスラエル主権下に併合する方針。
これについては、アメリカは昨年国際違反法違反とみなさないと方針転換したようです。いろいろとあるので、こちらも紹介します。


前書きが長くなりましたが、中東和平案を紹介します。
米、新たな中東和平案発表 パレスチナは拒否 (写真=AP) :日本経済新聞

【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領は28日、イスラエルとパレスチナの中東和平案を発表した。一定の条件のもとでパレスチナに独立国家の建設を容認した。ただ、双方が帰属を争うエルサレムの扱いを「イスラエルの不可分の首都」と位置づけ、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地でのイスラエルの主権を認めるなど親イスラエル色が濃い内容になった。

歴代の米政権が唱えてきたパレスチナ国家とイスラエルとの共存をめざす「2国家共存」の原則は維持しており、イスラエル側は今回の提案に基づき和平交渉に臨むことに同意している。ただ、パレスチナ側はさっそく拒否を表明した。交渉再開にこぎ着けられるかは不透明だ。

和平案はパレスチナに(1)ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地でのイスラエルの主権容認(2)エルサレムをイスラエルの首都と認定(3)パレスチナのガザ地区のイスラム原理主義組織ハマスの非武装化(4)テロ活動の停止――などの条件を事実上受け入れるよう求めた。

代わりに「パレスチナ国家」の建設を認め、首都は東エルサレムの周辺部としている。ただ、パレスチナが将来の首都として位置づけてきた旧市街を含む東エルサレムではない。一方、イスラエルには4年間、新たな入植活動の停止を求めた。

トランプ氏はホワイトハウスで「双方にウィンウィンの内容だ」と強調した。発表にはイスラエルのネタニヤフ首相が同席した。和平交渉が再開されれば、国境線の画定などの詳細を詰めることになるとみられる。これとは別に、トランプ政権は10年間で500億ドル以上のパレスチナへの投資をめざす経済支援策もまとめている。

トランプ氏は「パレスチナにとっても最後のチャンスだ」と力説し、パレスチナに交渉テーブルに着くよう求めた。ホワイトハウスが28日に発表した文書は「和平案への単なる反対は、展望なき現状維持を宣言することになる」と明記し、交渉に反対姿勢を示すパレスチナをけん制した。

中東和平交渉はオバマ前政権下の2014年を最後に中断。17年に大統領に就いたトランプ氏はかねて和平合意を「究極のディール」と称し、「双方が受け入れ可能な和平合意の達成に深く関与する」と実現に意欲を示してきた。
この案自体は、結構乱暴なように見えますが、一理はあったりします。

パレスチナのガザ地区のイスラム原理主義組織ハマスについては、イスラエル、欧州連合(EU)、アメリカ合衆国はハマースをテロ組織に指定にしております。

ハマース - Wikipedia

基本的にテロからを撲滅して、パレスチナ国家を承認し、パレスチナへの投資を行うことで、一連の問題を解決する案となっております。そういう意味では、パレスチナ難民問題も、国家を承認することで解決といった狙いもあると思います。

当然のことですが、この案はパレスチナ首脳にとっては都合が悪く、且つ、国際連合パレスチナ難民救済事業機関にとっても都合が悪い内容となっております。


UNRWAは国際連合機関の中でも最大の組織であり、29,000人を超える職員がいる。その内の99%はパレスチナ人の現地職員で、年間数億米ドルが支払われており、一種の利権になってるのと、パレスチナ人の雇用にも繋がっており、こういった理由からも、現状維持が望ましいといった動きが実態と思われます。

だからこそ、トランプ大統領は、10年間で500億ドル以上のパレスチナへの投資を打ち出し、国連の支援金の拠出を止めたわけです。

背景として、以下の記事を紹介。


国務省は、実際の難民の数が国連の主張する数字よりはるかに少ないとする機密扱いの報告書を隠しており、約530万人とされるパレスチナ難民が、実際には約2万人だったという話もあれば、別のアプローチを考えるのが合理的というのがトランプ政権の意向ともいえます。

この案は賛否両論ともいえます。


パレスチナに対して、国家承認と自立を促し、そのための投資は惜しまないといったスタンスの案なので、国連や首脳としては受け入れがたい案ですが、パレスチナ住民にとっては、そこまで言うほど悪い話ではないようなバランスで成り立っております。纏まるかどうかは分かりませんが、一つの形として提示したことに大きな意味のある案であるとは思います。